全国5300万人のメトロ書店ファンの皆様こんばんは ! いよいよ新しい年度となりましたが なかなか世の中は騒がしいですね。新型コロナウイルスの蔓延に『100日後に死ぬワニ』の話題、株価は大暴落してオリンピックも一年延期……。
かつて釈迦牟尼は、王宮の四方から出て生病老死、命あるものが必ず通らねばならない苦悩を知り、出家を決意したといいます。もちろん、我らもそのいずれからも逃れられないわけで、 その中で懸命に一日一日を過ごしているわけです。
その限られた時間の中で読んでもらえる物語の、なんと幸せなことでしょうか。まだ世に知られていない作家や物語を、これはというものを皆様にご紹介するこのコーナー、今回ご紹介するのはこちら!
誉田龍一さんの『日本一の商人 茜屋清兵衛奮闘記』です。
多くの人は「商い」から 自由ではいられません。何かを作り上げ、宣伝し、 買ってもらう。ですが、その大前提すらできていない店を清兵衛は任されます。彼は茜屋をどう変えていくのか。読み終えてはたと気づくのが、まだ茜屋は日本一になっていない。第二巻の『茜屋清兵衛、危機一髪』を終えてもまだなのです。ですが、それを見ることはかなわなくなりました。
誉田さんの名をこのコラムで初めてご覧になる方もいらっしゃるでしょう。彼は多くの作家が知り、多くの読者が触れ合ったことのある作家です。また彼の薫陶を受けて作家の道を歩み出した方もいます。その行いのいずれもが、「日本一」の小説家になるための周到な布石であったと 私は考えています。それは、作品を「商う」者として当然の誠実で実直な姿勢でありました。清兵衛と同じように。
作家としては速さと着実さを兼ね備え、人としては明るく実務にも長けていた誉田さんは、まさにこれから、というところで命を終えられました。ですが、作家は死んでも作品は残ります。誉田さん、めちゃくちゃ売れてまた俺を悔しがらせてください。さようなら。
(最近の仁木英之)
柴田勝家の一代記『レギオニス』、現代東京を舞台にした忍者小説『立川忍びより』、天空の島を描いた冒険ファンタジー『ていん島の記』、あの世への坂道のシリーズ『黄泉坂案内人 愛しき約束』と刊行してきたわたくしめが今年最後にお送りするのは『鉄舟の剣 幕末三舟青雲録』激熱の剣豪青春小説となっております。もちろんお求めはメトロ書店でどうぞ!
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