全国五千五百万人のメトロ書店ファンの皆さまこんにちは。とんでもない暑さがきておりますが、お加減いかがですか。私は短い夏休みを子どもたちと満喫すべく川や海へと行きたおし、日焼けの皮を家中に散らしたおして家人に叱られています。これだけ暑いと読書なんてと思われるかもしれませんが、クーラーをきかせた室内での読書、心地よいものです。
今回の次に来るのはこの一冊、ご紹介させていただくのはこちら!
『キネマ探偵カレイドミステリー 〜輪転不変のフォールアウト〜』(斜線堂有紀・メディアワークス文庫)
私はミステリ作家ではなく、書く才能もないとまずお断りしておきます。やりもせずに、ではなく力を振り絞っての結果です。なのでミステリを書ける人が羨ましい。とりわけ、その精髄とも個人的に思っている本格ミステリの書き手には羨望と敬意を抱いています。
このジャンルでは若手の台頭もめざましく、相沢沙呼、円居挽など、どんな頭脳と筆力しとるねんと頭を抱えたくなるような才能が続出しています。斜線堂さんもその第一線をいくお一人です。
ミステリ読みでもない私が本作、そして斜線堂さんの著作に惹かれるのは、謎解きの結構もさることながら、人物たちの感情がとにかくデカい。暑苦しいほどの感情が互いの間に流れているのですが、それをクールに描かれる。もし若い頃に読んでいたらすごく影響されていたかもしれない、と思わされます。
本作の中で起こる事件は凄惨ではあるのですが、そこに向き合う者たちのデカい感情のぶつかり合いと精緻にくみ上げられた謎とその解決に、ミステリよくわからないおじさんもヨシ! とわかった気になって本を閉じるのです。ミステリ、とりわけ本格なんて読む気にもならんという皆さまにこそお勧めしたい。
この稿を書きつつ斜線堂さんのSNS見に行くと新刊が重版されたとのこと。また「次」を当ててしまったな……(遠くを見ながら)
(最近の仁木英之)
疫病、長雨、酷暑ときて台風ときて大変な目にお遭いの方もいらっしゃるかと思います。そんな時はどうかほんの短い間でも、物語の世界に避難して空想の中で心を休めてください。物語はあなたを決して拒みません。そんなゴーツーファンタジーな私も新刊を出しております。『マギオ・ムジーク』(ジュラ出版局・フレーベル館)よろしくね!
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